
この度、iwao galleryでは奥山帆夏の個展「少し遠い景色」を開催いたします。 奥山は、初期から現在に至るまで、樹木をモチーフに制作を続けています。一見、風景画のように見えるその画面には、淡く柔らかな色彩が重なり、余白の中から樹木の輪郭が浮かび上がります。木々は支持体から独立し、まるで薄い皮膜のように画面に現れ、見る者の視線をその奥へと誘います。具象的なモチーフと抽象的な色彩が行き来し、私たちが〝風景〟として捉えている輪郭そのものが揺らいでいきます。 「風景は少しずつ記憶によって形を与えられ、ひとつの景色として立ち上がってくる」と奥山は言います。私たちは、目の前にある風景をそのまま記憶しているわけではなく、時間の中で少しずつ薄れ、変容しながら、やがて自分自身の中の〝景色〟として残っていきます。 手が届かないほど遠いのではなく、見えているのに完全には掴むことのできない、少し遠い景色。その距離の中で、奥山の絵画は静かに姿を変えていきます。絵の前に立つことで、いつしか鑑賞者自身の記憶の中にある〝景色〟とも重なっていくのかもしれません。この機会にぜひご高覧ください。 日常の景色や旅先での印象的な風景でさえ、私たちはそれを完全に実感することは難しく、 奥行きを持って広がっているはずの風景が、一枚の面としてキャンバスに閉じ込められている ーー風景が〝見えている〟のか、それとも〝模様として刷り込まれている〟のか、 見ることによって生まれる像の境界が揺らぐとき、そこに残されるのは、曖昧になった記憶なのかもしれません。 そして、風景は少しずつ記憶によって形を与えられ、ひとつの景色として立ち上がってくるのです。
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