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かつて、「あらゆるメディアは人間の身体的な感覚を拡張したものだ」と、メディア論を象徴する存在である、マーシャル・マクルーハン [b.1911-1980] は論じたが、花形槙の作品は、それとは逆に、あらゆるメディアが身体へと侵食していくさまを表象しているように思える。いま現在、発展したテクノロジーは、花形の視座をもってすれば、人間が生み出した技術が人間自身へと逆流するかのごとく、人間の身体を拡縮させているのだ──。 花形槙は、1995年東京都生まれ。メディアアートと、パフォーマンスアートを融合させた作品発表をおこなう気鋭アーティストであり、昨年、舞台芸術祭「秋の隕石 2025 東京」において、東京芸術劇場・アトリエウエストにて上演した《エルゴノミクス胚・プロトセル》では、”人間が、椅子に〈成る〉” というパフォーマンスをおこない大きな注目を集めた。 そして、今夏には、文化庁 WAN: Art & Tech Creators Global Network アーティストとして、ニューヨークにてレジデンスをおこない、また、先日には、装置によって身体を変容させた〈キメラ〉のための生活空間を構築し、〈キメラ中心主義的領域〉を生成するプロジェクト《CHIMERIA》(2025-) にて、世界で最も伝統と権威のあるメディア・アートのコンペティション「プリ・アルスエレクトロニカ 2026」の Interactive Art+ 部門で Award of Distinction を受賞。来る9月には、オーストリアのリンツ・レントス美術館でのインスタレーション展示を控えている。 花形は自身の実践に通底するキーワードとして、たびたび〈捻転〉という単語を用いる。捻転とは、物やからだがねじれることや、ねじり回すことを指し、特に、医療分野では臓器や血管がねじれる病態を意味する。これを花形は、端的に言えば、人間を中心とした世界を変革させ、他物のためにある人間の身体についての可能性を考えるためのアナロジーとして捉えている。この人間社会において定義づけられた機能や存在意義を逸脱する可能性をこの単語に見出しているのだ。 本展は、主に上演形式の発表をつづけていた花形にとって、コマーシャルギャラリーでの展示形式としては、初の本格個展となる。本展にあたって、花形が着目するのは、”人間の穴” であり、人間誰しもが持ち得ながら、凝視しきれていない “異型” を、複数の映像作品として発表する。本展タイトルに関した「未体」とは、”未知”、”未満”、”未来” といった復意をもたせた造語であり、人間の身体の変容可能性に対する人類の想像力は、いまだ無限の可能性を帯びつづけていることを示す──。 西田編集長
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