
1981 年生まれの山上は、ストリートアートに刺激を得ればスプレー缶を持ち東京の路地をさまよい歩き、宗 教やシャーマニズムに感化されれば南米やインド、アジアを遊行し、粘菌に興味を持てば長野の山奥で暮らし ながら森を彷徨い歩いてきました。一見それはあてどなく放浪しているように見えますが、山上は興味を持っ た対象物との関係性を踏まえ、移動していくことでそれらの境界を繋いでいったのです。 本展では、山上が現在強い関心を抱いている海と、そこに流れ着く漂流物をテーマに平成30年度文化庁新進芸 術家海外研修制度により渡航、滞在したインドネシアで制作した作品を展示いたします。 山上は、インドネシアと日本は同じように海によって世界から閉ざされていながらも開かれており、それはと ても曖昧なボーダー(境界)であり、それらを繋ぐ存在が漂流物だと考えています。 漂流物とは知の領域と物の領域の差異であり、生者と死者、現世と彼岸、意識と無意識の交わりを媒介する重 要なメタファーなのです。 目に見える世界と見えない世界があると仮定し、それをどう捉え結びつけていくのか。 そのような世界の複雑な関係性を、もの、場所、時間に解体し、ブリコラージュ(注1)やカットアップ(注 2)の技法を用い再構築し、違う角度から世界を捉え直そうとしています。 パンデミックにより、より複雑化しより曖昧となった世界を、山上の描く作品から捉え直し、まだ見ぬ世界を 感じていただければと思います。 (注1) Bricolage フランスの文化人類学者・クロード・レヴィ=ストロースは、著書『野生の思考』(1962 年)などで、 世界 各地に見られる、端切れや余り物を使って、その本来の用途とは関係なく、当面の必要性に役立つ道具を作る ことを紹介し、「ブリコラージュ」と呼んだ。彼は人類が古くから持っていた知のあり方、「野生の思考」を ブリコラージュによるものづくりに例え、これを近代以降のエンジニアリングの思考「栽培された思考」と対 比させ、ブリコラージュを近代社会にも適用されている普遍的な知のあり方と考えた。 また彼は世界各地の呪術や神話における思考の特徴的なパターンも「ブリコラージュ」と呼んだ。たとえば神 話体系は様々な神々や英雄が織り成しているものであるが、全体としては個々のエピソードの集まりであり、 きれいに一続きにはなっておらず神々の系図も複雑になっている。これは、先行する民族 や隣接する民族の 神話を引用したり、各地方の神話を一まとめにしたりしながら神話が形成されてきたために、神話体系が寄せ 集めの状態(ブリコラージュされた状態)となっているからである。 出典 : フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』 (注2) Cut up カットアップは、(紙に印刷された)完成された完全な直線的テキストを使って、それを少数あるいは単一の 語にバラバラにすることで実行される。それからバラバラにされた断片は新しいテキストに組み直される。こ の再編はしばしば驚くような新しいフレーズになることがある。一般的なやり方はテキストが印刷された紙を 4 つに(長方形に)裁断し、それらを並べ替え、でたらめな言葉は即興的かつ斬新な創意によって変えつつ、混ざりあった散文をタイプライターで書き起こすことである。出典 : フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』
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