
三田村光土里(1964年、愛知県生まれ)は、東京を拠点に活動する現代美術作家です。2005年には文化庁の海外派遣芸術家としてフィンランドに滞在し、同年にフィンランドの三都市で巡回個展を開催。2006年にはウィーンの分離派会館Secessionでの個展を行うなど、国際的に活躍しています。 主な展覧会・プロジェクト • あいちトリエンナーレ2016 • アッセンブリッジ・ナゴヤ2020 • 恵比寿映像祭2022 • 瀬戸内国際芸術祭2022 彼女の代表的なプロジェクト「Art & Breakfast」では、インスタレーションと参加者が一緒に朝食をとるイベントが一体化した独自の形式が注目を集めました。 今回の個展「20世紀のかけら」では、20世紀の歴史と記憶を現代的な視点で再解釈し、個人的な経験と結びつけた作品が展示されます。三田村は「Chronicle of the 20th Century」という事典を基に、20世紀の重要な出来事や報道写真を断片化し古びた小物や端材に組み込むことで、抽象的な歴史を日常的な形で表現しています。 特に、作家自身が60歳という節目を迎えることをテーマに、辞典に書き残された他人の記念日のメッセージと重ね合わせながら、時代を超えた共通性を探っています。戦争や惨事など20世紀の暗い側面にも向き合い、現代の視点から捉え直す試みが特徴です。 「20世紀のかけら」は、歴史的な出来事を個人的な経験や感覚を通して再構築し、現代に生きる私たちとの関係性を探っています。三田村の特徴である「日常の記憶や追憶のモチーフを紡いでいく」表現が、20世紀という大きな歴史的文脈にどのように展開されるのか、ぜひご注目ください。 【作家ステートメント】 昨年、オーストラリアのリサイクルショップで一冊のとても重くて分厚い本を買った。 “Chronicle of the 20th Century”と題されたその本は、20世紀の主要な出来事を大量の報道写真とともに総集した年表事典で、20世紀終盤にいくつかの国で出版された。 この本をもとに小作品をつくろうと日本に持ち帰り、8月に入って改めて本を開いた。 すると中表紙に、父親の60歳の誕生日を祝う子供たちからの手書きのメッセージを見つけた。2000年3月28日と日付が添えられ、1940年のページをめくってみると、惨たらしい写真の数々が目に飛び込んだ。 100年分のトピックを一冊に編集すれば、戦争や殺戮、惨事ばかりが誌面を占める。 人の世の非情、それを繰り返す歴史の無情が、今も終わらない戦争や原爆の日、終戦の日とも重なり気が滅入った。制作の苦闘など些末なことだが、歴史と向き合うのが簡単であってはならない。わたしも今月、この本が贈られた主とおなじく60歳を迎える。ならばこの節目の夏に、思い切り足掻いてみようと決めた。 記事や写真を眺めても、知り得るのは史実のかけらにも満たないし真実にも近づけないだろう。それでも、そこに集められた20世紀の僅かな断片を古びた小物や端材にそっとはめ込んでみる。すると、歴史に堆積する記憶は、本の中でなく生きている私たちのそこここに、言葉にならないまま静かに宿って見える。
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