
いらはらは大学卒業後、一途に漆という素材にこだわり作品を発表し続けています。 縄文時代早期から、漆はその優れた性質により、我々の暮らしのなかで永く使われて来ました。漆の木は、ウルシ科の落葉高木で、高さが七、八メートルにもなります。この木は、東アジアと東南アジアにしかなく、水はけが良くて陽がよく当たり、空気が湿潤で、栄養分の豊富な土のところでないと育たちません。漆の樹液は、この木の幹を傷つけて採集します。一度にたくさんの傷をつけてもダメで、六月中旬から十一月頃まで、四、五日ごとに少しずつ長くした傷をつけて、そこから浸み出てくる液を少しずつ掻き取り、貯めていきます。なぜ一度に傷をつけてもだめなのかというと、こうした樹液は、いつでも幹の中を流れているわけではなくて、傷をつけられたことによって、それを治すために、木が漆を作るからと言われています。 漆は木の生命そのものと言っても過言ではないのです。 いらはらは漆と和紙を用い、近年その表現の幅を広げています。 本展では撚りという行為を核にした作品を展開します。 いらはらは以下のように言います。 「人の道のりを「紐」に例えるならば、人生は何本もの出会いという「糸」が絡み合い、「撚り」がかけられ、「紐」になっていく。出会った「糸」は「撚られ」彩をなすことでその人の人生は彩られる。そして死を迎えたとき、人は「撚り」から解き放たれ、天から与えられた寿命・天寿をまっとうするのだろう。「撚る」という行為によって自らの制作が成り立っている、そのことを思うにつけ、人生における「糸」とのかかわりの深さ、「撚り」の妙を感じる。作品は、和紙をつまみ、両手を合わせて「撚り」をかけ、仕上げている。「撚り」という作業は祈りの姿にも似ている。今回の作品は、「撚る」ことで生まれ出た、人の心の振幅である。」 木の生命を用いたいらはらの作品をご堪能ください。 *参考文献:URUSHI OHTAKI 漆の基礎知識 画像:京王プラザホテル本館3階ロビーギャラリー
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