
橋本聡 : 私はレオナルド・ダ・ヴィンチでした。魂を売ります。天国を売ります。 この度弊ギャラリーでは初めて橋本聡(はしもとさとし b.1977)の企画を開催しますのでご案内を申し上げます。 橋本は昨年の「独断と偏見:観客を分けます」(国立新美術館)、「偽名」(「14の夕べ」東京国立近代美術館)のほか、国内外にて毎月の様にイベントや展示活動を展開し、現在もっとも警戒されている作家の一人です。 橋本の活動は創造的行為でありながらまるで現実での事故に出くわしたかの様で、何かしら「立場を問う」「詰め寄る」「逸する」「契約を取り交わす」「所有を移転させる」など、社会的道義や法を越えて、観客という在り方に留まらせない地平へと遭遇させられます。 今回橋本は、今日まで明かされることのなかった、自身が実はレオナルド・ダ・ヴィンチ(b.1452)本人であったことを告白します。 展示では、彼が天国からやって来たことと、レオナルドであったことを説明し、証明する映像が発表されるほか、天国の土地、彼の魂、再制作される19世紀の絵画、長年の研究による発明、他者から買取ったコンセプトによってつくられた地図、昨年の街頭パフォーマンスの映像、などによって構成され、販売致します。 1513年にレオナルドとして筆を折って以来、今年でちょうど500年。今日まで誰にも明かさることのなかった、この歴史の事実にお立ち会い戴けたらと思います。そしてレオナルド・ダ・ヴィンチ/橋本聡の最新の活動と、皆様の死後を含めた未来を見極めて戴くまたとない機会であります。 ぜひ本展にお出掛け下さい。以下は作家よりのご挨拶になります。 私はレオナルド・ダ・ヴィンチでした。魂を売ります。天国を売ります。 私は天国からやって来ました。そこでは、天国の者が羨む素晴しい土地を所有しています。今の地球で言えば、ポリネシアのような美しい自然、日本のようなインフラ、中国のような広大さ、イランのようなエネルギー資源、EUのような文化遺産、北欧のような福祉、アメリカのような政治力など、それら全てを兼ね備えたとしても、この土地から得られる恩恵には及びません。私は死後そこに戻るつもりでいましたが、この度その土地を売り出すことにしました。なぜなら死後の私はきっと別のところに行くことになるからです。 貴方が非道なおこないをしていなければ、貴方はきっと天国に行けます。皆さんが思うよりも天国は狭き門ではありません。とはいえ、天国では皆が平等な状況に置かれるわけではないので、あまりよいところとはならないかもしれません。場合によっては地獄のような日々となるでしょう。ですから、運否天賦によって貴方の死後が致命的とならぬように、この貴重な土地を購入なさることをお勧めします。そうすれば、貴方の死後はその土地によって素晴しい日々となるでしょう。 本来は天文学的な売値が妥当ですが、皆さんの多くがその存在を疑っていたり、あるいは宗教観なり世界観が異なるでしょうから、今回は破格の安さでお売りします。なぜなら私は現世の生活に執着しており、そして目下の生活に困窮しているからです。 ほとんどの方がこのことをフィクションとして片付けることはよくわかっています。そこで、さらに私がレオナルド・ダ・ヴィンチであったことを告白し、証明することで幾らかでも理解を得られればと思っています。事故、病、自然災害、紛争、殺人、自殺など貴方がいつ死ぬかはわかりません。この機会を逃されないことを切に願っています。 橋本聡: 私はレオナルド・ダ・ヴィンチでした。魂を売ります。天国を売ります。 4.6土 – 5.4土.2013 沢山遼さんによる 橋本聡 私はレオナルド・ダ・ヴィンチでした。魂を売ります。天国を売ります。 展のレビューが 4月15日はレオナルド・ダ・ヴィンチ(かつての私)の誕生日とされる日です。またレオナルドにおいて尊敬していたルネサンスの開闢者フィリッポ・ブルネルスキの命日でもあります。「コロンブスの卵」として有名な卵を如何に立てるか、という逸話はコロンブスのものではなく、実はこのブルネルスキのものでした。本展では卵に関わることが大きな役割をになっております。私はこの記念日にちなんでギャラリートークを開催することにしました。ゲストに松井勝正氏をお招きし、レオナルド・ダ・ヴィンチにおける作品についてお話しいたします。 松井勝正|1971年生まれ。芸術学。主な論文=「壁に書かれた暗号――バロックのインターフェイス」『季刊InterCommunication』65号(NTT出版)、「瀧口修造のスケッチブック:批評的読解」『多摩美術大学研究紀要』19号(多摩美術大学)、「ダンスの色は何色」『Purple-Green』1号、「クレーと表現主義」『issues』5号、「無地――マチスの色彩構成について」『issues』4号(以上、多摩美術大学芸術学科)など。 4月23日は橋本聡(現在の私)の誕生日とされる日です。またレオナルド・ダ・ヴィンチの遺書作成日(その年の復活祭前日)でもあります。さらに本展の映像にて多く語られるデュシャンの中でも特に関連の深い作品「秘めたる音に」の作成日も4月23日(その年の復活祭の日なのでイースターエッグのようなもの)になります。私はこの記念日にちなんでギャラリートークを開催することにしました。ゲストに粟田大輔氏をお招きし、1回目のギャラリートークでは対象としなかった高橋由一(私はレオナルドのあと日本に渡り19世紀には高橋由一として活動していました)、橋本聡、及びマルセル・デュシャンにおける作品についてお話しいたします。東京都美術館では、ちょうどこの4月23日よりレオナルド・ダ・ヴィンチ展が開催されるので、併せてお越しいただくとよいかもしれません。 粟田大輔|1977年生まれ。美術批評。2011年に立ち上げたアート専門のインターネット放送局「comos-tv」( )の運営メンバー。論考に「書き換えられるシステム」「ポスト消費社会と映像の再生産」などがある。 5月2日はかつての私、レオナルド・ダ・ヴィンチの命日とされる日です。5/2を左右反転(鏡面文字2⇄5)させた2/5は2月5日春分の日(文政11年)、もうひとつのかつての私、高橋由一の誕生日とされる日です。本展ではレオナルドと高橋における自画像を鏡に映ったものとして(鏡面文字のように)左右反転させることで、それぞれを読解することを明かしています。また、5月2日は八十八夜(立春から88日)でもあります。 私はこの記念日にちなんでギャラリートークを開催することにしました。ゲストに伊藤亜紗氏、平倉圭氏をお招きし、今回は作品ではなく「魂」、「天国(生/死)」、及び「売買」についてお話しいたします。 伊藤亜紗|東京工業大学リベラルアーツセンター准教授。専門は美学。言葉やイメージと、それを受け取る身体の関係に関心がある。研究の傍ら、『わたしは真鈴』等の小説を書いたり、小林耕平の作品『タ・イ・ム・マ・シ・ン』『殺・人・兵・器』『生・命・誕・生』に参加したりしている。著書に『ヴァレリーの芸術哲学、あるいは身体の解剖』(水声社、2013年)。
























