
私たちは、私たちのいる場所から、何を知ることができるだろう。何を見ることができるのだろう。 語られたこと、語られなかったこと。見えるもの、見えないもの。残った声、残らなかった声。 異なる環境や歴史の中で、私たちはそれぞれの測り方で世界を見る。 違いを抱えながら、私たちはどこまで分かり合うことができるのだろう。何を共有する事が出来るのだろう。 / 薬師川千晴 立つ場所や、背負う背景によって、私たちの目に映る世界は決して同じではないという事実。そして「境界」が抱え続ける、答えのないさまざまな問いについて—。自作の顔料絵具を用い、身体を介して直接描かれる薬師川千晴の絵画は、「対」という関係性を主題とする抽象絵画である。 複数のシリーズによって展開されるその制作において、色は互いの領域を侵食するように重なり、ときに地と図の関係を反転させながら、境界を溶かしていくが、それらがひとつに混ざり合うことはない。画面に残されたマークメイキングには強い身体性が感じられ、それは画面の向こうにいる誰か、あるいは目には見えない世界に向けた、行為による問いかけの痕跡となる。 わかりやすさが優先される現代において、薬師川の作品は、行為の明快さや鮮烈な色彩を入口にしながらも、幾重にも生まれる問いの迷路へと見る者を導き、そのあいだに、容易には答えの定まらない「わからなさ」を抱える絵画である。 今という時代に生きる私たちが抱えてしまった、問い続けることそのものの難しさから目を逸らさず、声をあげ、向き合い続ける姿勢に、確かな気骨を感じさせる。 稀有なアーティストとして、その活動に注目している。
館の公式サイトの紹介文を、そのまま載せています。 出典で読む ↗
11月14日から
観たいに入れると、会期が始まる前にお知らせします
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