
私がこのシリーズの制作を始めたのは、仕事が多忙になり、車での移動中にしか作品に費やす時間がなくなった3年前からである。その頃住んでいた丹波篠山から職場のある高槻まで、片道70km、信号や低速車に引っかかることなくスムーズに走っても90分の道のりであった。そのため日の出前から走り始めることも多く、刻々と変化する太陽光の色彩と田園風景の美しいスペクタクルの中を日々移動していた。その頃の私にとって、その時間だけが、過去の作品で扱ってきた光と再会できるような、心躍る時間だった。 真冬のある日、日の出前の空の色づき(After GlowならぬBefore Glowである)を見ようと、見晴らしの良いところに車を停めていた。黒い車体の光沢面を、オレンジ〜藍色のグラデーションが幾本もの川のようになぞっていく。色づく空と、それを反射する金属の光沢面以外は漆黒の闇である。闇がこの二つの空間をつないでいるような錯覚に陥る。物理的に隔てられた二つの空間という、次元を超越して輝く色彩。触ることのできない空の光が、冷たい金属の2次元曲面の中に生捕りにされる。ちょうど車に積んでいたマクロレンズで、この反射光を撮影したのが「Flatland」シリーズの一枚目である。車のボディーという二次元曲面に凝縮された、言語化不能な世界に与えられる一つの翻訳であり、私が対峙した越境感覚の記録である。 <作品タイトル> A:Flatland-Dawn 20220212- B:Flatland -Dawn 20220306- C:Flatland-Forest 20220430-
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